個別指導は大変
勤務先では集団指導(年に1回、県内の医療機関を集めて行われる)しか受けていないのですが、個別指導は大変!!
こんな質問がありました。
開業してから半年ぐらいたっているんです。保険の事とか・・聞かれたりするんですか?
開業後半年ということは、ちゃんと運営しているかの確認ではないかと思います。指導というよりは監査に近いようような。
私自身は経験がないのですが、おそらくこういった質問があるのでは?と思います。
・診療録の記載方法がきちんとできているか(指導内容など)
・算定方法に誤りがないか
・その他医療法に係わる部分全般や施設基準について
もし個別指導であれば、ある特定の診療行為に対して指導が行われるため、診療録を持参する患者を指定されるはずです。
(解答者 ぽちさん)
以下は管理人が2005年度に受けた集団指導の内容をまとめたものです。
だいぶ以前のものですので、内容は大幅に変わっていると思いますので参考までに・・・
診療録(カルテ)と傷病名について
診療録の記載義務
診療録の保存 ⇒ 診療完結の日から5年、その他の記録(レントゲンフィルムなど)は3年間
診療録は保険請求の根拠であり、診療行為の事実に基づいて必要事項を十分に記載する。必要事項の記載がないと不正請求の疑いを招く。
記載はペン等で、修正は修正液を用いず二本腺で行う。(修正前の記載内容がわかるように記載する事)
複数の医師が診療にあたる時は、診療にあたった医師がその都度署名、記銘又は押印をする。(責任の所在の明確化)
- 医学的に妥当適切な傷病名をつける。
- 急性・慢性・部位・左右の区別をつける。
- 疑いの病名は、診断がついた時点で確定病名に変更する。または、当該病名に相当しないと判断した段階で中止とする。
- 診療開始、終了年月日および転帰を記載する。
- 実態のない、いわゆる「レセプト病名(保険病名)」は認められない。
レセプトの傷病名だけでは、診療内容との一致に疑問が生じる場合、レセプトの摘要欄に病名の説明を、以下の事に注意して記載すること。
- 客観的、具体的データー(検査結果の数値など)
- 簡潔明瞭に
- レセプと内容と一致すること
基本診療科等
再診料・外来診療科は医師による診察を行った場合に算定する。
- 院内感染防止対策:各病室に水道又は消毒液が設置されている。
- 院内感染対策委員会が、月1回程度定期的に開催されている。(※院内感染防止対策未実施の場合、減算)
- 入院診療計画書:入院後7日以内に、定められた書式に従がって、医師が文書により患者に説明する。(※入院診療計画未実施の場合、減算)
- 医療安全管理体制:安全管理の責任者等で構成される委員会が月1回程度開催されている。職員研修が年2回程度実施されている。(※医療安全管理体制未整備の場合、減算)
- 褥創対策:日常生活の自立度が低い入院患者について、定められた書式に従がって診療計画を作成する。(※褥瘡対策未実施の場合、減算)
- 重症者等療養環境特別加算は、絶対安静が必要な者など医療上の必要性から入室させた場合でなければ算定できない。(医療機関の都合等で入室させた場合は算定できない)
- 電話等による再診を「再診料」として算定できるのは、緊急やむ得ず実施した場合に限られる。
- 入院基本料の算定において、保険医療機関を退院後、同一傷病名により当該保険医療機関又は特別の関係にある保険医療機関に入院した場合の入院期間は、当該保険医療機関の初回入院日を起算日として計算する。
- 保険医療機関は、患者の入院に際し、過去3ヵ月以内の入院の有無を確認しなければならない。また、患者の退院に際しては、退院証明書を患者に渡すことが望ましい。
指導管理等
- 指導料・管理料は、いわば『見えない』技術料である。
- ほとんどの指導料・管理料は、指導内容あるいは治療計画等の診療録への記載が算定要件となっている。
悪性腫瘍特異物質治療管理料
検査結果・治療計画の要点を診療録に記載
特定薬剤治療管理料
対象疾患・薬剤が規定されている。血中濃度・治療計画の要点を診療録に記載
(老人)退院指導料
関係職種が共同して療養計画を作成し、説明文書の写しを診療録に貼付
診療情報提供料
患者紹介の返事は算定不可
薬剤管理指導料
医師の同意、薬剤師による薬剤管理指導記録の作成
在宅医療
在宅酸素療法指導管理料
対象患者が規定されている。指示事項・指導内容の要点を診療録に記載
在宅自己注射指導管理料
対象患者が規定されている。指示事項・指導内容の要点を診療録に記載
在宅患者訪問看護・指導料
保険機関と特別の関係にある訪問看護ステーション又は当該保険医療機関の医師が訪問看護指示書を交付した訪問看護ステーションにおいて、訪問看護療養費を算定した月については原則として算定できない。
検査・画像診断
- 結果が治療に反映されない検査は研究的・健康診断的とみなされ、保険請求は認められない。
- 算定要件(対象、診療録の記載等)が規定されている検査項目に注意する。
- CT及びMRIを同一月に同一部位に対して実施した場合、当該月の2回目以降の費用は頭部・躯幹・四肢毎に定められた点数(逓減された点数)を算定する。
- 以下のような不適切な実施例に注意!
不適切なセット検査
出血凝固線溶系検査として一律にFDP、D-Dダイマー、AT-V等を実施
スクリーニング的に多項目(免疫系検査、甲状腺機能系検査等)を一律に実施。検査の重複
炎症反応を調べるために画一的に併施しているCRP、ESR。
甲状腺機能を調べるために併施しているFT3とT3、またはFT4とT4。算定要件の定められている検査
尿沈渣顕微鏡検査は、尿中一般物質定性半定量検査等で異常所見がある場合、又は診察の結果から実施の必要性があると考えられる場合が対象。
呼吸心拍監視は、観察結果の要点を診療録に記載し、レセプトの摘要欄に算定開始日を記載。
プロトロンビン時間とトロンボテストを同時に測定した場合は、主たるもののみ算定。
HbA1c、フルクトサミン、グリコアルブミンのうちいずれかを同一月中に併せて2回以上実施した場合は、月1回に限り主たるもののみ算定。必要性の乏しいと思われる検査
貧血のない患者に対する網赤血球数、白血球数に異常のない患者に対する末梢血液像。
DICの診断・治療に反映されないTAT、D-Dダイマー可溶性フィブリンモノマー、プラスミン、α2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体 等
外来と入院あるいは転科、転棟等により同一検査を実施(血液型、感染症検査 等)
医学的必要性なく実施されたUCGのパルスドップラー加算回数が過剰な検査
末梢血液一般検査、末梢血液像、生化学的検査 等
研究目的で定期的に検査を実施(骨塩定量検査、尿中アルブミン定量精密測定 等)検査に係る誤請求
細菌薬剤感受性検査
細菌培養で菌が検出されなかったにもかかわらず算定。
病理組織顕微鏡検査
所属リンパ節を2臓器として算定。
投薬・注射
(効能・効果、用法・用量、禁忌等)を遵守する。
- 保険診療では、厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬剤を用いることはできない。
- 薬剤の投与期間に係る規制は原則として廃止されたが、医学的に予見することができる必要期間に従がったもの、又は症状の経過に応じたものでなければならない。ただし、例外として麻薬及び向精神薬、薬価基準収載後1年以内の医薬品については、投与期間の制限が設けられている。
- 患者を診察することなく投薬、注射、処方箋の交付はできない。
- 処方箋の交付に際し、患者を特定の保険薬局へ誘導することは禁止されている。
- 経口と注射の両方が選択可能な場合には、経口投与を第一選択とすること。
- 抗菌薬等は、抗菌スペクトルを十分に考慮し、適宜薬剤感受性試験を行い、漫然と投与することのないよう注意すること。また、常用量を超える投与については、その必要性を汁分考慮すること。
- 血液製剤(赤血球濃厚液、新鮮凍結血漿、アルブミン製剤等)の使用にあったては、(財)血液製剤調査機構から出されている「血液製剤の使用にあたって」の内容を遵守すること。
- 以下のような不適切な実施例に注意
禁忌投与
非ステロイド系消炎鎮痛薬を消化性潰瘍のある患者に使用。
パナルジン(抗血小板剤)を出血傾向のある患者(消化器出血傾向等)に使用。
静脈用脂肪乳化剤(イントラリポス等)血栓症のある患者に使用適応外投与
H2ブロッカーを胃潰瘍、急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期以外の患者に使用
肝庇護剤(強ミノC、タチオン注)を薬剤性肝障害、術後肝障害などの患者に使用
セレネース、ドルミカム等を単なる鎮静目的で使用用法外投与
外用の適応のない抗菌薬等(アミノグリコシド等)を吸入あるいは局所洗浄等で使用
抗癌剤(パラプラチン、ランダ)を腹腔内撒布過量投与
慢性胃炎に対するガスター錠の1日あたり20mgを超える投与
蕁麻疹に対する強ミノCの常用量(20mlまで)を超える投与重複投与(同様の効能効果、作用機序をもつ薬剤の併用)
ガスターを経口と注射の両方で使用
MVI(総合ビタミン剤)と各種ビタミン剤の併用多剤投与(作用機序の異なる薬剤を併用)
消化性潰瘍に対するPPI(オメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤)とH2ブロッカーの併用
各種抗菌薬等の併用長期漫然投与
各種抗菌薬等(特に投与期間が定められている抗菌薬等)
慢性動脈閉鎖症に対するPGE1製剤
※リプルは4週間で判断
キネダックは12週間で判断
よくある査定
H2ブロッカー(ガスター)注射液
この系統の注射液の適応疾患は、上部消化管出血あるいは出血性胃潰瘍などとなっています(慢性胃炎では査定されます)。また使用は出来るだけ短期間にしておく事が得策です。食事が可になれば、早急に経口剤に変えるほうが、良いようです。
(解説 てぃむさん)
処置・手術・麻酔
- 創傷処置、術後創傷処置、皮膚科軟膏処置は、処置の範囲により点数が異なる。処置を行った際は、診療録に処置をした範囲、使用した薬剤等を記載すること。
- 点数表にない手術の手術料のみを患者または医療機関の負担とし、残りを保険請求することはできない。
- 特殊な手術(点数表にあっても、従来の手技と異なる場合を含む)の手術料は、勝手に準用(振替請求)せず、事前に地方保険事務局に照会すること。
- 手術当日に手術に関連して行った処置、診断のための試験穿刺、検体採取等の費用は、当該手術料に含まれ、別途算定できない。
- 手術には、「施設基準に適合していない場合は算定できない手術」、「施設基準に適合している場合は5/100に相当する点数を加算し、適合していない場合は所定点数の30/100に相当する点数を減算する手術」及び「施設基準の設けられていない手術」がある。
- 特定保険医療材料については、告知で定められた材料価格基準に規定されている価格で算定する。また、価格が定められていない特定保険医療材料については、実際に医療機関が購入した価格により算定する。
- 閉鎖循環式全身麻酔における実施時間とは、患者に「麻酔器を接続した時点」を開始とし、患者が「麻酔器より離脱した時点」を終了とする。(手術室への入室時刻を開始時とはしない)
- 麻酔管理料は、麻酔科標榜医が麻酔を実施するとともに、麻酔実施日以外に術前・術後の診察を行い、その内容をカルテに記載した場合に算定する。
- 輸血料は、患者に対して輸血の必要性、危険性等について文書による説明を行わなければ算定できない。(説明に用いた文書の写しを診療録に貼付すること)
リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語聴覚療法)
- 従事職員(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、従事者)ごとに訓練実施終了患者の一覧表を作成し、1日ごとの取扱い患者数を把握できるようにすること。
- 訓練の都度、訓練内容の要点、訓練を実施した職員の氏名、訓練開始時刻及び終了時刻を記載する。
- 個別療法、集団療法ともに、それぞれの算定要件が定められていることに留意する。なお、訓練時間が20分に満たない場合は、基本診療科に含まれる。
- 1日の実施単位数は、従事職員一人につき集団療法で54単位、個別療法で18単位を限度とする。
- 患者一人あたりの算定単位数についても、患者ごとに限度が定められている。
- 理学療法(T)(U)、作業療法(T)(U)、言語聴覚療法(T)(U)の個別療法で、早期リハビリテーション加算を算定するには、1ヶ月に1回以上定められた様式に基づいて患者に説明の上、文書を交付しその写しを診療録に添付する。
診療報酬明細書(レセプト)の作成
- レセプとの傷病名は診療録の傷病名と一致しているか。
- 実態のない、いわゆる『レセプト病名(保険病名)』が記載されていないか。
- 疑い病名や急性病名、状態名が、長期放置されていないか。
- レセプトと診療録の診療開始日が一致しているか。
(PPI、ファーストシン、インターフェロン等)
- レセプとの請求内容は、診療録の診療内容と一致しているか。
- 薬剤の剤分けが正しく行われているか。
- 間違った記載欄に記載されていないか。
(例:処置に用いた薬剤を投薬欄に記載 等)
- 病名のみでは診療内容に関する説明が不十分と思われる場合は、『傷病詳記(病状説明)』をレセプトに添付する。この際、検査データ等の客観的、具体的事実を簡潔明瞭に記載するように心がけること。